「三咲町連続吸血鬼事件」から数年。間賀田四季の許に一通の手紙が送られた。
差出人の名は間桐桜。四季が冬木市に聖杯に関する調査に赴いた当時の一件で、知り合いになった少女だ。
会ったのはあれが最初で最後。
四季当人は聖杯のことなどとうに放棄し、桜のことも忘却の彼方にあったが、あの少女の方は恩を忘れないでいたのだろう。
間桐家当主臓硯の没後、桜は遠坂には戻らず、間桐に残った。慎二とは和解したようだ。
遠坂凜は慎二を殴った。ぐーで殴った。憎悪と怨嗟の篭ったそれを、慎二は甘んじて受けた。
それでめでたしめでたし。とは、ならなかった。
今では愛妹を巡り、若き間桐家と遠坂家の当主の間で激しい争奪戦が繰り広げられている。
――そんなのほほんとした日々の日常を導入に、桜の手紙はこう締めくくられていた。


聖杯戦争が始まります。と。


間桐桜…蟲の巣食う少女。吸収の魔術師。聖杯の器。

遠坂凜は実の姉。間桐慎二は義理の兄。二人との関係は良好で、二人が桜を巡り見境なく争奪戦を繰り広げているのは周知の事実である。
兄と同様、弓道部に所属。同部に所属する衛宮士郎が怪我をして以来、一人暮らしの彼の家に食事をつくりにいっている。元々料理は出来ず士郎に教わる立場であったが、瞬く間に腕を上げて現在はその立場も逆転しつつある。洋食が得意。
間桐家現当主は慎二だが、事実上は桜。しかし臓硯なき以後、魔術からは距離を置いている。

間桐慎二…閉じた魔術師。偽りの当主。応石使い。

マキリ最期の魔術師にして、マトウ家初代の魔術師。
弓道部副主将。衛宮士郎とは友人。遠坂凜が虎視眈々と士郎を狙っていることを知ってからは、積極的に恋に臆病な桜を応援している。
間桐家の実子でありながら魔術回路は閉じており、養子にきた桜を虐待していた過去を持つ。
自意識過剰でプライドが強いが、臓硯死後は幾分かカドがとれて付き合い易い奴になった。
魔術師になることを諦めておらず、閉じた回路を開く為の方法を模索中。
その一方で、遺産を使い魔具(マジック・アイテム)の蒐集にも手を出し始め、そこで蒼崎橙子と出会う。
閉鎖解除の眼鏡をかけることをスイッチに、強引に回路を開くことに成功する。
橙子を師とし、ルーン*1の魔術を学ぶ。水(ラーグ)属性に特化。応用で氷(イス)。学び始めたばかりで威力はたいしたことはないが、火に特化した魔術師であり姉弟子でもある黒桐鮮花以上の開化が期待される。それも当然で、鮮花の「火力「能力をこれ以上伸ばすのには、国内では不可能だが、慎二の場合冷凍倉庫に凍死寸前までぶち込んでおけば一晩で否応なく身につく。事実、慎二は橙子からそういった「訓練」を実施させられている。冬には八甲田山死の彷徨だそうだ。
補助の魔具として応石を使う。行石は「水」、応石は「氷」。魔術回路が閉じた、一般人並みの状態でも使役することができる。汎用性は高いものの、慎二の場合は氷の礫を飛ばすことぐらいしかできない。攻撃・防御として使役するには「剣」「盾」といった他の応石が不可欠となる。地図にない南海の孤島・宇津帆島における「90年動乱」を機に応石の多くは封印されているので、蒐集は困難になっている。

衛宮士郎…剣の魔術師。ブラック・スミス。正義の味方。

弓道部。怪我をきっかけに弓道から退いたが、とくに未練はないらしい。
負傷を理由に友人の慎二が義妹である桜を「こき使ってくれ。ついでに仕込んでくれ」と衛宮家に送り込んで以来、家族と同然の付き合いをしている。それを追うように学園のアイドルである遠坂凜も乗り込んで居座るようになったのだから、人生はわからない。
魔術師・衛宮切嗣の養子。切嗣は士郎を魔術には関らせたくなかったようで、殆ど一切を学ばせずに世を去っている。
遠坂凜と出会うまで独学で強化の魔術を鍛錬していたが、へっぽこの域を出ない。凜に指示するようになってからも相変わらず。

聖杯戦争の聖杯は「願望機」であり、偽りの聖杯である。第三次にアインツベルンの召喚した「この世の全ての悪」に汚染されている。
冬木市に舞い戻った間賀田四季は汚染された聖杯をぶち壊す為に、真祖の姫に援助を乞う。
蛇の知識によれば、千年城にはあれが存る筈だ。
城の宝物庫の中に、他の財宝に埋もれてそれは存る。
「願望機」としての能力こそないものの、何物をも浄化する聖なる魔具。
即ち、本物の「聖杯」が。

聖骸布*2製のトランクケース。それに厳重に保管された聖杯。
資格無き者が所有することを許さず、それに触れることができるのは無垢な赤子か徳の高い星人のみである。
死徒はおろか、一般の者は触れることはおろか、近づくことすらできない。唯一、例外は規格外の真祖の姫君のみ。
直視すれば、たちまち塩の柱と化す。
教会と姫君が共同戦線を張った見返りに、初代ナルバレックあたりが嫌がらせを込めて贈呈したものだが、無論、効果はなかった。
今は千年城の宝物庫に、他の献上品の財宝と共に放置されている。

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*1:文字自体が魔力を秘めた文字。表音、表意の両方の性質を兼ね備えている。有名なのは「ゲルマン式」と呼ばれる24文字。文字1つ1つに意味を含み、何かに刻んだり書いたりする事で効力を発揮する。太古の戦士は「矢止めのルーン」「盾のルーン」「癒しのルーン」「救いのルーン」などを武器や防具に刻み込んだり、お守りとして身に付けた。【ルーン文字ヴァイキングhttp://www.runsten.info/index.html 【ハリポタ館】http://www.din.or.jp/~t-nanai/harry/harry.htm 【Saga&Edda Webringhttp://www.enjoy.ne.jp/~nao70/webring/index.htm

*2:聖骸布は:歴史的遺物。十字架から降ろされたイエス・キリストの遺体を包んだ亜麻布であると言われる。 【The Shroud of Turin】http://www2.ocn.ne.jp/~g-compri/index1.html