海の上では無敵。
水の中では不死。


その不思議なちからを「加護」とひとは云うだろうか。
私はたんに「呪い」だと思うのだけれど。


船に乗せられて海に流された私を救けてくれた人のことを振り返り、のちのひとは善人といったけれど、
なんのことはない、そのひとにも私利というものがあって、私に生きてて貰わないと困ることになるのだと、ずっとあとになって知ったのだ。


「王*1にはエクスカリバーが存り、あの鞘が王に不死を与えている。あの鞘は私が策を労じよう。
お前には水辺での不死性がある。生き残りたくば、地の上での戦は避けるがよかろう」


ああ、この魔女*2は、王の異父姉であり、王の異母姉でもあるこのひとは、私と王とを戦わせようと画策している。
魔術師*3の力を削ぎ、円卓の槍騎士*4を誘惑し、王と王の騎士、王の国を滅ぼそうと画策している。


でも私にはどうでもいいこと。そう、私にはこの先なにがどうなってしまおうと、最早どうでもいいことだ。


私はただ、
王と王子としてではなく、
女王と姫としてではなく、
ただ、本当に、
本当の母子のように、彼女に甘えたかっただけなのだ。


あの海で他の子供達と一緒に、溺れて死んでしまえたなら、こんな望みを求めなかったのに。


水性の騎士。水性の不死。
これを「呪い」と呼ばずに、何と呼ぶのか――。



――

今回のは前回の続き*5、というよりもダイアリーの注釈タグの表記スタイルの確認ってところなんである。
注釈タグ内では改行コマンドが無効化、改行以下が本文内に表示される模様。よって、注釈タグ内の文章はどんなに長ったらしく読みにくくなっても、改行を挿れちゃ駄目よってことで。

*1:アーサー・ペンドラゴン/Arthur Pendragon http://www.minic.com/arthurdic/arthur.html

*2:モルガン・ル・フェイ/Morgan Le Fay http://www.minic.com/arthurdic/morgan.html イギリスの神話でMorganは人魚を指す。ケルト神話ではMorigan/戦いの女神があり、これがMuirgen/人魚の名とが結びついたとも考えられる。ウェールズ語では「海より生まれた」の意があり、これらのブリトンケルト神話が一つとなってウェールズ伝説も結合し海の乙女、戦いの女神、妖精の女王が統合されてフランスに入り、アーサー王伝説における魔法を使う湖の妖精となる。

*3:マーリン/Merlin http://www.minic.com/arthurdic/merlin.html

*4:湖のランスロット/Lancerot de lake http://www.minic.com/arthurdic/lancerot.html

*5:『どらごんぷりんせす・めーかー』 http://d.hatena.ne.jp/ahen/20040308#p1